1、運命の日。

 雨が。
 その日は雨が、降っていた。


 前から、車のライトが迫ってきたのが見えた。そのライトは雨粒を照らして、闇の中に一本の線を作っていた。両側の田圃と畑が映る度、それが近付いてくるのを実感する。そして道を照らす度、歩いていく道が所々見える。
 あたし達は傘を差していて。
 狭い道の中央。横に並んで歩いていて。
 あたしの右にいた幸ちゃんが、そのライトを認めて足を止めた。そしてやがて、道の端に移動する。この場で車をやり過ごすつもりなのだろう。彼の足は、それ以上動かない。
 あたしはその横顔を見上げ、彼を見送ってから。
 ・・・その後ろに隠れるべきだったのかもしれないけれど。
 ひょこひょこひょこ。と、道の向こう側。近かった方の端の、反対側に移動した。
 車二台がすれ違うのに、運転に慣れていない人はきっとちょっと難儀する程度の道幅の、農道とまでは行かないけれどきちんとは舗装されていない土の道上。
 進行方向。あたし達から見て、幸ちゃんは右側。あたしは左側。前方は緩い右折になっていて。
 それは目を瞑っていても思い出せるほど、通い慣れた駅までの道。ここら辺の人達はみんな、多分通り慣れた道。


 両側にいるのは邪魔になるかもと思ったのは、その車が十メートル程までに近付いてきた頃だった。けれど今から移動すると危ないし、通るのに不自由はないだろうとその場に立って車を見ていたあたし。多分、幸ちゃんもそうだったのだろう。一瞬見た彼の視線は、全く動じることなく車に向けられていた。

 その車のタイヤが滑り、あたしの方に横滑りをしてきたのは、ほんの一瞬後だった。




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